アルバム解説
ユッカ・エスコラのニュー・プロジェクトは、コンポーザー/アレンジャーとして北欧ジャズ・シーン最注目のユッシ・ランぺラと強力タッグを組んだ大注目作!
ユッカ・エスコラにとって本作は通算4枚目のソロ・アルバムとなる。ただ、本作はエスコラのソロというより、ユッシ・ランペラという作曲家/アレンジャーとのコラボレーション・アルバムという側面が強いものだ。企画自体はランペラが長年あたためていたものであり、そうした意味ではランペラのアイデアにエスコラがフィーチャーされたものと言ったほうが正しいかもしれない。実際、本作に収められた10曲はすべてランペラの書いたナンバーである。ランペラによれば本作のイメージはマイルス・デイヴィスの『Birth Of The Cool』(クールの誕生)とのこと。57年に発表された『Birth Of The Cool』は(録音は49、50年)は、ギル・エヴァンスという稀代の名編曲家を擁し、ジェリー・マリガン、リー・コーニッツといった名手を含む9重奏団を率いて、クール・ジャズの夜明けを告げた歴史的名盤という評価がされている。綿密なリハーサルのもと、オーケストレーションによって細部まで緻密に作りこまれたアルバムであり、それまでマイルスがどっぷりつかっていたアドリブ至上主義的なビバップとは全く正反対の価値観による抑制された演奏で、マイルスにとっても、そしてジャズにとっても分岐点となる1枚となったのである。FCQでのファンキーでホットな演奏と比べ、ここでのエスコラやラッシーの演奏はスマートで、過剰な技巧に走ることなく、サウンド全体に彩りを与える役割を果たしている。FCQとは意図する方向性が全く異なるので当然ではあるが、エスコラはむしろこうしたスタイルに合うミュージシャンではないかと思わせる場面もある。印象としては個々のプレイヤーのアクの強い演奏ではなく、全体をとりまとめて指揮をとるランペラの鮮やかな手腕に酔いしれるところが多く、そうした中でエスコラなりラッシーなりがどう生かされていくのか、というアルバムだろう。決して踊れるタイプのジャズではなく、そうした面を期待するのならお勧めはできないが、エスコラやラッシーが幅広いタイプの演奏に対応できるミュージシャンであることを証明し、FCQでは見えてこなかった彼らのまた別のプレイに接することができるアルバムなのだ。何よりクラブ・ジャズ、ダンス・ジャズというある意味での呪縛を超え、より広い視野でジャズを楽しむきっかけになればいいのではないかと思う。